考えなけりゃと思いつつ

小説を書いたり、写真を撮ったりするということは、つまり表現するということは悲しみを貯めることなんだ、という話をした。ぼくらはすべて時の旅人であり、いつかこの世界を去っていく。だから歓喜の瞬間を撮った写真でさえ悲しみに包まれていく。それが、無常ということだ。
 しかし、我が身の不運や失った恋愛や、精神的に深い傷をおわされた対象を、決して憎んだり恨んだりしてはいけない。なぜかというと、憎むことによって悲しみが濁ってしまうからだ。
 清らかで透明な悲しみのなかからしか、素晴らしい表現は生まれてこないものだ。